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親が暮らしていた実家の処分は、多くの家庭で避けて通れない相続の課題です。空き家のまま放置すれば、固定資産税や管理費の負担が続くことに加え、資産価値の低下を招くこともあります。可能であれば、生前のうちから売却を検討しておくことで、できる限り家族間のトラブルや経済的リスクを抑えることが望ましい方向です。
ここでは、実家を相続した場合の売却方法や税金の特例について、当メディア監修の公認不動産コンサルティングマスター永田氏に聞いてみました。
親が元気なうちに実家を売却するならば、事前に家族間で意見をすり合わせながら方針を決められます。相続開始後の「誰が相続するか」「どう分けるか」などの争いを未然に防げる点は、生前売却の大きな利点です。
親の意向を反映した売却なら家族全員の心理的な負担が軽くなるので、納得度の高い形で資産整理を進めることができます。
生前に売却を検討することで、親本人の意思を明確に確認できます。売却後の資金をどのように使うか、介護や老後の生活にどう充てるか等々を家族で話し合えるのも利点です。
本人の希望を尊重しながら売却を進めれば、将来的な後悔や親族間の誤解を防ぎやすくなるでしょう。
親から子へ資金を贈与して住宅を取得する場合、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」を利用できることがあります。一定の要件を満たせば数百万円から1,000万円超が非課税となり、親子双方に節税効果が生まれる制度です。
年度ごとに上限額が変わるので、制度利用前に最新条件を確認しましょう。
生前贈与で名義を子どもに変更しておけば、売却手続きは格段にスムーズになります。相続開始を待つ必要がなく、名義人本人がすぐに契約できるため意思決定も迅速です。贈与時の登記が完了していれば権利関係の確認も容易なので、様々な売却リスクを抑える効果も期待できます。
生前贈与を行うと、贈与額が基礎控除の110万円を超える場合に贈与税が課されます。不動産の評価額が高い場合、課税額も大きくなる点に注意が必要です。負担を抑えるには、相続時精算課税制度や非課税特例の活用が有効です。贈与前に税理士へ相談し、適切な方法を検討しましょう。
相続後に実家を売却し、代金を分け合う「換価分割」という方法があります。現物を分けるよりも公平に分配できるため、相続人間の不満を防止しやすい方法です。売却には相続人全員の同意が必要ですが、売却手続きが終われば金銭の分配もスムーズです。トラブルを避けながら遺産整理を進められます。
相続した実家を売却する際は、まず相続登記を行って正式な名義を確定させる必要があります。登記を怠ると売買契約ができず、売却手続きが滞る恐れがあるので注意してください。2024年からは相続登記が義務化されたので、放置すれば過料の対象にもなります。早めの登記で売却を円滑に進めましょう。
相続や生前贈与を受けた実家を売却する場合には、まず登記名義を現所有者へ変更する必要があります。名義が故人のままでは契約は結べません。
登記による名義変更は自分でもできますが、用意する書類や手続きが煩雑なため、費用はかかりますが司法書士へ依頼したほうが無難です。
名義変更が完了した後は、不動産会社に査定を依頼します。立地や築年数、建物の状態、需要動向などにより評価は大きく左右されます。
査定は複数社に依頼して比較し、査定根拠を明示する信頼できる会社を選びましょう。訪問査定では周辺環境や接道条件も加味されるので、より実勢に近い価格を把握できます。
査定結果をもとに仲介を依頼する不動産会社を決定し、媒介契約を締結します。契約には専属専任・専任・一般の3種類があり、それぞれ情報公開範囲や販売自由度が異なるので、対応する不動産会社に違いを確認しましょう。
囲い込みを避けたいなら一般媒介を利用します。ただし、一般媒介は不動産会社により売却方法や売却熱意に差がある場合もあるので、事前に販売計画や広告方法、依頼者への報告頻度などを確認することが大切です。
媒介契約を結ぶと、不動産会社が自社広告やレインズ登録、現地案内などの売却活動を行います。物件の写真の撮り方や価格設定の工夫でも反響が大きく変わるため、担当者と密に連携しながら自分でもできる限りのことをやりましょう。
不動産会社から活動報告を受けた際には、内見数や問い合わせ件数などを確認。状況に応じ、販売戦略を柔軟に見直すことが重要です。
購入希望者が現れたら、条件調整のうえ売買契約を締結します。価格・引渡時期・付帯設備・手付金・解除条件などを契約書に明記し、双方が合意して署名押印します。不動産会社が行う重要事項説明も軽視せず、疑問点があればその場で解消するよう努めましょう。
決済日には買主から残代金を受け取り、所有権移転登記と鍵の引渡しを行います。ガス・水道・電気などの精算、不要品の撤去も事前に済ませておくことが大切です。
物件が賃貸中だった場合は、事前に入居者との契約終了や敷金精算も行っておきましょう。引渡し完了後は、領収書や登記関連書類を整理・保管します。
売却で利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年に確定申告を行います。課税対象となる譲渡所得は「売却代金−(取得費+譲渡費用)」で算出します。申告書類を作成する際には、物件の保有期間により税率が変わる点にも留意してください。
確定申告に必要な書類は、申告書のほか売買契約書や領収書、登記事項証明書など。3,000万円特別控除などの特例を適用できる場合もあるため、税理士に相談して適切な方法を確認しましょう。
相続放棄する場合、自分に相続が発生したことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の書類を提出する必要があります。実家の不動産はプラス資産ですが、その評価額より借金などのマイナス資産が多い場合、相続放棄を検討したほうが良いかもしれません。
なお、相続放棄の期限を過ぎると自動的に相続を承認したとみなされるため、実家とともにマイナス資産まで引き継ぐ形となる点にご注意ください(マイナス資産がある場合)。
被相続人が生前に給与や不動産収入などを得ていた場合、相続人が代わって確定申告を行う必要があります。これを「準確定申告」と呼び、相続開始を知った日から4か月以内が申告書類の提出期限です。
準確定申告を行う際には、被相続人の所得内容を正確に把握して税額を計算することが必要です。難しい場合には税理士のサポートを受けましょう。
なお、複数の相続人がいる場合は代表者を定めて共同で申告を行います。
相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内が期限とされています。早めに遺産の評価を行うとともに、複数の相続人がいる場合には、納税の期限を意識して分割協議を行う必要があります。
納付は現金一括が原則ですが、条件を満たせば延納や物納も認められます。特例や控除の適用には期限内申告が必須です。
実家を売却して利益が出た場合、その利益部分に対して譲渡所得税がかかります。譲渡所得は「売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた額」で算出されます。
税率は、土地や建物の所有期間が5年を超えると長期譲渡所得となり、所得税15%・住民税5%。一方、所有期間5年以下で売却した場合は短期譲渡所得として、所得税30%・住民税9%の高い税率が適用されます。
税負担を抑えるためには、保有期間や特例の活用を考慮して売却時期を判断することが大切です。
取得費加算の特例は相続税を納めた場合、その一部を取得費として加算できる制度です。この特例を適用すると、加算した分だけ譲渡所得が減り、譲渡所得税を軽減できます。
適用対象は、相続税の申告期限から3年を経過する日まで(実務目安3年10ヶ月以内)に売却した物件です。適用のためには、相続税申告書の写しなどの証明書類を添付し、税務署へ確定申告する必要があります。
被相続人が生前に住んでいた自宅を売却する際には、「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用されることがあります。譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度なので、これが適用されれば税負担を大きく抑えることができます。
ただし、相続人や家族がその家に住んでいた場合は対象外です。そのほかにも適用には細かい条件があるので、売却前に税理士などの専門家への相談をおすすめします。
相続後、誰も住まなくなった家を売却する場合、「相続空き家の3,000万円特別控除」が利用できるケースがあります。昭和56年5月31日以前の旧耐震基準で建てられた住宅を耐震改修して、または取り壊して売却した場合が対象です。
適用のための売却期限は、相続開始から3年を経過する年の12月31日までとされています。該当する可能性のある場合には、早めに税理士等へ相談しましょう。
実家の売却は、タイミングや手続きを誤ると税負担や家族間トラブルにつながることがあるので注意してください。可能であれば生前に親の意思を確認しておくことで、相続後の混乱防止を目指しましょう。
また、相続税や譲渡所得税にはさまざまな特例があり、活用すれば負担を抑えることもできます。名義変更から確確定申告までの手順を把握するとともに、早めに専門家へ相談することで、トラブルを抑えながら少しでも節税効果の高い方法で実家を売却しましょう。