相続した空き家の3000万円特別控除とは?

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親から相続した実家が空き家になってしまい、売却を検討する際、譲渡所得税(利益にかかる税金)の負担が心配になるケースは少なくありません。この税負担を大幅に軽くできる制度が、「被相続人居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」です。

こちらでは、特例の基本的な仕組みや厳格な適用要件、2024年(令和6年)1月1日以降の法改正による変更点のほか、特例を無駄なく受けるための売却手順や確定申告に必要な書類を順を追って解説します。

空き家の譲渡所得から最高3000万円を控除できる特例

この特例は、親など被相続人が住んでいた家屋やその敷地を相続によって取得し、一定の要件を満たして売却した場合に、売却益から最高3,000万円を差し引くことができる制度です。

不動産を売却して利益が出た場合、通常は約20%(所有期間5年超の長期譲渡所得の場合)の税金がかかります。しかし、この特例を利用して3,000万円を控除できれば、売却益が3,000万円以下なら税金は一切かからず、最大で約600万円近い節税効果を見込めることになります。利益が3,000万円を超えるケースでも、超えた部分にのみ課税されるため負担は大きく減少します。

なお、この特例の適用期間は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡に限定されており、自動的に適用されるわけではありません。自ら確定申告を行わなければ控除を受けられない点に注意しましょう。

空き家の3000万円特別控除の適用要件

節税効果が非常に大きい分、この特例を利用するための要件は細かく設定されています。大きく分けて3つの要件をすべてクリアする必要があります。

1. 被相続人(亡くなった方)の居住に関する要件

第一に、被相続人がその家屋に住んでいた状況についての条件があります。相続開始の直前まで被相続人がその家屋を一人暮らしの自宅として使っていたことが大前提となり、配偶者や子供など同居人がいた場合は対象外となります。

ただし例外として、被相続人が要介護認定などを受けて老人ホームや介護施設に入所し、相続開始の直前までそこで暮らしていたケースでも、入所直前まで一人で住んでいたことや施設入所後に家屋を誰かに貸し出していないことなどの条件を満たせば適用対象に含まれます。

2. 対象となる建物・土地に関する要件

売却する建物そのものにも、建築時期や用途などの厳しい制限が設けられています。建物は昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された戸建て住宅であることが必須であり、マンションなどの区分所有建物は対象になりません。これは、旧耐震基準で建てられた古い空き家を減らすという国の目的があるためです。

さらに、相続が開始してから売却するまでの間に、その家屋や敷地を他人に貸したり、事業用として使ったり、相続人自身が住んだりしていない空き家の状態を保つ必要があります。売却前に一時的でも賃貸に出してしまうと特例が使えなくなるため、利用履歴の管理には慎重な判断が求められます。

3. 売却時期と金額に関する要件

期限と売却額の上限も重要です。売却の期限は相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、であり、かつ売却代金が1億円以下であることが条件です。

たとえば、2023年4月1日に相続が開始した場合、3年を経過する日は2026年4月1日となり、その年の年末である2028年12月31日が期限となります。また、売却先が配偶者や直系血族、生計を一にする親族など特別な関係にある人への売却は、特例適用の対象外として扱われます。

2024年(令和6年)1月1日以降の譲渡に関する法改正のポイント

空き家問題の解消を促進するため、2024年の税制改正で特例の要件が一部見直されました。売主にとって利便性が上がった反面、相続人が多い場合には注意すべき変更点もあります。

買主側での耐震改修や解体が認められるように要件が緩和

これまで、特例を受けるためには売却前に売主の負担で耐震リフォームを行うか、家屋を解体して更地にする必要がありました。しかし、令和6年1月1日以降の譲渡では、家屋をそのまま売却した後に、買主側が耐震改修や取り壊しを行っても特例を受けられるように要件が大幅に緩和されました。

具体的には、売却した年の翌年2月15日までに買主が耐震基準を満たす工事を完了させるか、解体工事を済ませれば適用対象となります。これにより、売主は数百万円規模の先行投資や解体費用を負担するリスクを負うことなく、スムーズに売却へ進める可能性が高まりました。

相続人が3人以上の場合の控除限度額の変更

一方で、控除額の上限に関するルールは一部厳格化されています。相続または遺贈で対象の家屋と敷地を取得した相続人が3人以上いる場合、1人あたりの控除限度額がこれまでの3,000万円から2,000万円に引き下げられました。

取得した相続人が1人または2人の場合は、引き続き1人あたり3,000万円まで控除が可能です。兄弟3人で実家を相続して売却するようなケースでは、非課税となる枠が変動するため、事前の税金シミュレーションをより入念に行う必要があります。

特例を受けるための売却方法

要件をふまえると、特例を受けるためには家屋を残すか更地にするかの判断が必要です。それぞれの売却方法におけるメリットと注意点を整理します。

家屋を残したまま売却する場合

古い家屋を残して売る場合、その建物が現在の耐震基準を満たしていることを証明しなければなりません。昭和56年以前の建物は耐震性が不足しているケースが多いため、基本的には耐震補強工事が必要となります。耐震基準を満たしている証明として、耐震基準適合証明書や建設住宅性能評価書の写しを用意します。

前述の通り、令和6年以降の譲渡であれば買主が購入後に改修工事を行うという条件付きでそのまま引き渡すことも可能です。この場合、買主が翌年2月15日までに確実に工事を完了させるよう、売買契約の段階でスケジュールや条件をすり合わせておくことが不可欠です。

家屋を取り壊して更地で売却する場合

建物の老朽化が激しく、買い手がつきにくい場合は、家屋を取り壊して更地として売却する方法が有効です。買主にとっては自由に新築の計画を立てやすいため、売却活動がスムーズに進みやすいという大きなメリットがあります。

更地にするタイミングは、売主が引き渡し前に解体する方法と、買主に引き渡した後に解体してもらう方法から選べます。ただし、家屋を解体して翌年の1月1日を迎えると住宅用地の特例から外れ、その年の固定資産税が約3〜4倍に跳ね上がるリスクがあるため、解体の時期には細心の注意が必要です。

確定申告で提出する必要書類・入手先

3,000万円特別控除を受けるには、売却した翌年の確定申告期間(原則2月16日〜3月15日)に税務署へ申告を行う必要があります。直前に慌てないよう、必要書類と入手先を把握しておきましょう。

被相続人居住用家屋等確認書

特例適用において最も重要かつ準備に時間がかかるのが被相続人居住用家屋等確認書です。これは被相続人が一人で住んでいたことなどを市区町村が確認し、交付する証明書で、空き家が所在する市区町村の窓口で申請手続きを行います。

申請には、被相続人の住民票の除票、相続人の住民票の写し、電気・ガス・水道の閉栓証明書、売買契約書の写しなど、多岐にわたる書類の提出が求められます。老人ホームに入所していた場合は、介護保険の被保険者証の写しなども必要です。自治体側の審査や発行に数週間かかるケースも珍しくないため、売却完了後すみやかに申請に動くことをおすすめします。

売買契約書の写しや登記事項証明書など

売却の事実や金額を証明する基本書類も必須です。売買契約書の写しは、売却金額が1億円以下であることや売却日を客観的に証明するために使います。登記事項証明書は、不動産の所有権移転が正しく行われたかを確認するもので、法務局の窓口やオンライン申請で取得できます。

家屋を残して売却した場合は前述の耐震基準適合証明書などが、売主側で解体した場合には閉鎖事項証明書や解体工事の請負契約書の写しなどが必要になります。

譲渡所得の内訳書や確定申告書

最終的な申告には譲渡所得の内訳書と確定申告書を作成し、上記で集めた添付書類とともに税務署へ提出します。書類は税務署で入手できるほか、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーを利用すれば、オンライン上で金額を入力するだけで正確な書類を作成できます。

特例の適用には専用の付表の作成も必要となるため、計算や記入項目が複雑だと感じる場合は、税務署の無料相談窓口を利用したり、早い段階で税理士に手続きを依頼したりすることも有効な選択肢です。

編集チームより
3,000万円特別控除は期限内の売却が鍵

相続した空き家の3,000万円特別控除は、売却益にかかる税金を減らすことができる強力な制度です。しかし、相続開始から3年目の12月31日までという明確な期限があり、この期日までに無事に買主を見つけて売却を完了させなければ、特例の恩恵を受けることはできません。

そのためには、スムーズに買い手を見つけてくれる信頼できる不動産会社選びが極めて重要になります。もし、依頼した不動産会社が自社の利益を優先して物件情報を隠す「囲い込み」を行っていた場合、売却が長期化し、特例の期限切れという最悪の事態を招きかねません。

当メディアを監修する株式会社フリーダムリンクの永田氏の解説のもと、不動産売却における「囲い込み」の実態と、それを回避して確実・有利に売却を成功させるための対策について詳しくご紹介しています。大切な資産を守るためにも、こちらもあわせてご覧ください。